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Special_episode 03天皇杯前日のドラマ

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episode 03 / SIDE A Customer

つながった想い。

神奈川県 デザイナー Sさん

2017年10月25日。
神奈川県川崎市にある等々力競技場では、第97回天皇杯 全日本サッカー選手権大会・準々決勝「川崎フロンターレVS柏レイソル」戦が行われることになっていました。
クリエイターとしてフリーで活動する私は、川崎市サッカー協会様からのご依頼で、試合当日に配布する同協会の広報誌「KFA」を制作。試合5日前にプリントパックさんへ印刷を発注したのでした。
協会への納品予定は24日午前。納品する6000部すべてにプレゼント抽選会用のシリアルナンバーを貼り付ける作業があったため、当日ではなく前日に届ける必要があったのです。
そして、24日。もうすぐ正午になるというのに納品完了のメールが届きません。私は嫌な予感がしてサポートセンターに電話で問合せをしました。すると、台風の影響で配送がストップしているとのこと。その後の調べで九州工場から予定通り出荷され、愛知で止まっていることがわかりました。

「今日中になんとか届けていただけませんか。」
自然災害による配送の遅延は仕方のないこと。プリントパックさんには何の過失もないことはわかっていましたが、簡単に諦めるわけにはいきませんでした。なぜなら、それは天皇杯当日になければ意味のないもの。そして、「第53号・臨時増刊号」と銘打たれた広報誌「KFA」は川崎市サッカー協会としても約2年半ぶりとなる復刊号であり、いつもよりも強い想いが込められていたからです。

「わかりました。今から関東工場で刷り直して、今日中にお届けします。」
しばらくして返ってきた担当者の言葉に、私は耳を疑いました。まさかそんな手があるとは夢にも思いません。しかも、追加の費用はいただかないとおっしゃるのです。私は何度も「ほんとにいいんですか」と聞き返しました。

 「私どもができることをやるだけです。」
その力強い言葉にプロの仕事を見ました。私とプリントパックさんはネットを介して繋がっているだけ。でもその仕事には、人の血が通っていました。

プリントパックさんがご尽力くださったおかげで広報誌は24日の20時過ぎに協会へ到着。「信じられない。」絶体絶命のピンチからの奇跡に、協会ではどよめきが起きたと言います。

後日、私はこの出来事をコラムにしたため、地域誌に寄稿しました。天皇杯の裏側で起きたドラマを一人でも多くの方に届けることで、プリントパックさんからいただいた恩を返したかったのです。そして、私はそのコラム記事と、協会からプリントパックさんへの御礼の品である選手のサイン入りサッカーボールに礼状を添えて、ご担当者様にお送りしました。

あれから数ヶ月が経過。私は現在、KFA第54号の制作に取り掛かっています。あのとき、あんなドラマが起きなければ、KFAが継続することはなかったかもしれません。プリントパックさんにとっては、いつもの当たり前の仕事だったのかもしれない。でも、私たちは、そこから想いを届けることの大切さや素晴らしさを改めて知ることができた。この記念すべき第54号の印刷は、もちろんプリントパックさんにお願いしようと思っています。

episode 03 / SIDE B Printpac

お客様から届いた印刷物。

京都本社 営業課 K.N(42歳)

2017年10月24日のことです。その日、私はいつものようにお客様からの問合せに対応していました。
「お客様が困っておられるんです。でも、どうにもできなくて。助けてくれませんか。」
慌てた様子で私のもとに駆け寄ってくる女性スタッフ。詳しく話を聞いてみると、台風の影響で本日午前中に納品予定だった商品が届かず、お客様が困っておられるとのことでした。彼女が配送会社に問い合わせたところ、商品は九州工場を出て愛知でストップしており、本日中にお届けすることは不可能であることが判明。私はすぐさまお客様に電話をかけ、こう伝えました。
「私どもには、どうすることもできません。お許しください。」
すると、こんな言葉が返ってきたのです。
「なんとかなりませんか。明日の天皇杯で使うものなんです。」
天皇杯が、いかに大きなイベントか。サッカーには関心があったため、それ以上聞かずとも一大事であることは理解できました。

 このまま「できません」とお断りすれば、お客様だけではなく、何万人という観客のみなさまにもご迷惑をおかけしてしまう。何とかできないだろうか。私は本日中に商品を送り届ける方法を頭のなかで模索しました。

そして浮かび上がってきたのが、刷り直しという選択肢です。送り先である神奈川県川崎市まで1時間程度で配送できる東京工場で今すぐ印刷すれば、夜には届けることができる。もちろん、刷り直しにはコストが発生。さらに東京工場のスタッフには無理をお願いすることになります。それでも私は自分の判断で、お客様に再印刷の提案をしたのでした。

私たちの使命は、お客様の幸せに貢献することです。だから、それがお客様にとってベストな選択肢なのであれば合意を得るまでもありません。事実、東京工場の工場長にお願いをした際も「最速でがんばるわ!」と心強い言葉が返ってきました。

その後、工場からの連絡で無事に納品されたことを確認。私はようやく緊張から解き放たれたのでした。

翌日、テレビを見ていると天皇杯のニュースが流れていました。よかった。歓声に包まれるスタジアムを見て、私は胸をなでおろしました。

それから約1ヶ月が経過したある日のこと。私宛にダンボール箱が届きました。なんだろう?不思議に思い、送り主を見てみると、あのときのお客様の名前。中には選手たちのサインで埋め尽くされたサッカーボールと御礼のお手紙、そしてお客様が地域誌に寄稿されたというコラム記事が入っていました。コラムを読むと、あの日の出来事と、私たちに対する感謝の気持ちがしたためられていました。いつもはお客様の想いを印刷物にして届ける側ですが、受け取る側になってこの仕事の素晴らしさを改めて実感。以来、私のカバンの中にはお客様が書いてくださったコラム記事が入っています。